第2の人生を考えて退職するに当たり、定年退職なり、早期退職なり、退職の時期は変わっ
ても目標は豊かな人生をおくるということです。 趣味に生きる、ボランティアに生きる、ひたすら遊んで暮らすなど、生活の仕方はいろいろ考 えられますが、その前に金銭的にも生活が成り立たなければなりません。 ここでは、退職を思い立ってから行う手続きと、考えておくべきことを記述しています。 退職を決断する前に、よく退職後の生活設計を行ってもらいたい。 定年退職するにしても、何も考えないまま時を迎えると、その後の生活に困ったりします。 幸せな第2の人生を迎えるために、これを役立てて頂くことを希望します。
1.手続き関係
この項は特に早期退職や転職などをされる方がお読み下さい。
定年退職される方は、会社の総務がいいようにやってくれますので、特に気にする必用はな
いと思います。
● 健康保険の選択
今までは企業の健康保険組合に加入しているいわゆる組合健保ですが、退職して再就職し なければ基本的には国民健康保険に加入することになります。 ただし、企業の健康保険組合には任意継続制度というのがあって、2年間は組合健保に入 ったままでいられます。 国民健康保険料は住民税といっしょで、前年度(1〜12月)の給与(退職金は除く)から計算 されます。 管理職クラスの人は退職した時は給与が高いので、そのまま国民健康保険に移ると今まで より保険料が高くなってしまいます。そのため、退職して年収が下がるまで(これが2年)の間 組合健保に継続加入出来るようになっているものです。 任意継続の保険料は個人払いとして企業の健康保険組合に振込むことになります。 任意継続の書類を会社に提出すると、やがて健康保険組合から振込み等の手続き書類が 本人宛て送られてきます。 健保は任意継続にすることをお勧めします。 ● 退職証明書 退職後、国民年金等で役場の手続きなどを行う場合必要になることがあるので、2〜3枚会 社からもらっておきましょう。 『いついつ退職したことを証明します。』 という会社印を押した紙です。
● 離職票
退職後、職業安定所で失業給付を受けるために必要な書類。 必要事項を記入して会社に提出し、あとで本人に戻ってくる書類ですが、退職月の給料が確 定してから完成するので、月末ぐらいまでかかります。 従って、在職中に離職票を受け取ることはできないので、退職後会社から本人に郵送されて きます。 この書類が来てから、職業安定所に行くことになります。
● その他受け取り物件
雇用保険被保険者証、年金手帳を会社から受け取ります。
雇用保険被保険者証は再就職する場合必要になります。
年金手帳は年金の個人証明書ですから、大切に保管しましょう。退職後国民年金に切り替え る時、社会保険事務所の手続きでとりあえず必要です。
2.退職後の生活設計
退職後の生活費は夫婦2人で、年間350万円〜400万円は必要です。
税金、電気、電話、保険、食費等の経常経費と年間50万〜100万円程の特別経費(ゴル フ、パチンコ、競馬、冠婚葬祭、旅行などはこの中)を含めてです。 家賃や借金返済分は含んでいません。 年間400万円で計算しておけばほぼ大丈夫です。 この400万円をどう確保するかが、生活設計なのです。 この生活設計をきちんとした上で、年金の受取り方や貯えの目標をしっかり決めることです。 年間400万円確保するのにはどうすれば良いか、シミュレーションしてみましょう。
私の勤務していた某電気メーカーの場合を例にとり60歳で定年退職し、企業年金を60歳か
ら受け取るものとして概ね計算してみます。 60歳定年退職の場合 年額
企業年金の額はそれぞれの会社で違いますし、厚生年金の額はそれぞれの生涯の給料(標
準報酬月額)によって異なりますから、各自試算してみる必要があります。
この試算などをして、60歳以降の公的年金の受け取り額をきちんと把握しておくことが、ま
ずは重要でしょう。
上記の表はかなり良い条件の方です。
上記の条件でも、65歳からが問題です。 この不足分を75歳ぐらいまでどう充当するかの方策をしっかり決めておく必要があります。 方策としては @ 預金を取崩す。(退職までに1、000万円ほどの取崩し可能な預金積立てをしておく) A 個人年金で1、000万円ほど貯める。(65才から年金で受取る) B 子供の世話になる。 C ひたすら働き続ける。 D 最低限の生活をする。 などがありますが、税的にも金利的にも有利な個人年金で計画的に積み立てておくことをお 勧めします。
私の場合は個人年金を60歳まで積み立て、60歳〜74歳で受け取る計画を立てています。
75歳以降の企業年金、公的年金の支給額も65歳〜74歳と同じで400万円には達しませ
んが、もうこの年からは個人年金などでの上積みを考える必要はないでしょう。
負担経費は少なくなるし、子供の世話になっても良いですし。
なお、妻の国民年金がありますが、『サラリーマンの妻』 の空期間がありますから、年間50 万円ほどだと思っておいた方が良いでしょう。それを足しても、まだ不足です。 妻との年令差にもよりますが、妻が5歳若ければその5年間は妻の年金を期待できません。 なお、妻の国民年金の計算式は下記ですので、自分に当てはめて計算してみて下さい。 妻の老齢基礎年金の年額={(480−空期間月数)÷480×80}万円 昭和61年3月以前の結婚している期間が空期間です。 例えば、昭和48年10月に結婚したとすると、空期間は150ヶ月 妻の老齢基礎年金の年額=(480−150)÷480×80=55万円
いずれにしても家計の支出は土地柄などの生活環境によっても異なりますので、一度1年間
の家計簿をつけてみて、その家庭がいったいいくらで暮らせるのか見定める必要があります ね。
これは定年を迎えてからでは遅いんですよ。
50歳を超えたら生活設計を始めないとね。
ちなみに私の場合の資金計画は下記の通りです。妻の年金は加えていません。
年金収入は国民年金(基礎年金)、厚生年金、企業年金、個人年金から成っています。
個人年金は60歳〜74歳で170万円/年受け取る計画にしています。
年額
53歳〜59歳までは資金が不足しますから、預金の取崩しをします。
3.失業給付と手続きについて
20年以上の被保険者期間を有し、45歳以上60歳未満の者という前提で失業給付がどうな るかについて下記に記述しておきます。
60歳以上だと日数や額が少なくなったりしますのでよく確認して下さい。
● 給付がもらえる日数 自己都合退職か会社都合退職(会社都合というのは解雇に相当するようなもの)かで大きく 変わります。 ・自己都合の場合 150日(私の場合は180日でしたが今では減っています。) ・会社都合の場合 330日 自己都合か会社都合かは離職票に記載されています。 離職票は本人と会社の合議のもとに作られる書類ですので、作成時にしっかりと確認してお きましょう。 ● 給付がはじまる時期 ・自己都合の場合 受給資格者決定日の(7日+3ヶ月)後から支給開始 ・会社都合の場合 受給資格者決定日の7日後から支給開始 受給資格者決定日というのは、離職票を持って職業安定所に行き、求職の申込をした日を いいます。 ● 受給金額 離職の日以前、最後の6ヶ月間に支払われた賃金(賞与は除く)の日額の8割と言われてま すが、上限が決められていますので、管理職クラスの人はほぼ全員この上限にひっかかりま す。 上限の金額は毎年更新されますが、私の場合は10,704円/日でした。
この金額は自己都合か会社都合かにはよらず同じです。
2012年8月1日現在では上限が7,870円/日に減っています。
● 手続き ・会社から離職票が届いたらすみやかに職業安定所に行って手続き(求人の申込)をしまし ょう。 ・自己都合の場合、支給開始が遅いといっても手続きは遅らせてはいけません。 ・まずは離職票とともに、住民票、写真、通帳と印鑑(給付払込み口座用)を持って職業安定 所に行きましょう。 ・その後は月に1回失業の認定を受けに職業安定所に行きます。この認定を受けると1ヶ月 分の失業給付金が届け出口座に振込まれます。
4.退職後2年間の住民税、健康保険料は高い
住民税と健康保険料は前年度の年収を基準に決まっています。 住民税は6月〜5月分を前年度(1〜12月)の年収額で、健康保険料は4月〜3月分を前年 度(1〜12月)の給与額で決めて徴収されます。 従って例えば8月で退職したとすると、住民税はその年度の9〜5月分、健康保険料は9〜3 月分を退職前と同額で払い続けなければなりません。 前年度年収額が1000万円ほどだとすると、住民税5〜6万円/月、健康保険料3〜3.5 万円/月の支払いになります。 退職して収入が無いのにこの高額の請求が来るので、びっくりします。 退職した翌年度もこの高額は続きます。 例えば8月で退職したとしても、1〜8月分の給料とボーナス2回分(4〜8月分の評価に見合 ったボーナス相当分)がある訳ですから、前年度の7〜8割の年収額になります。 この額で翌年度の住民税、健康保険料が決まりますから、やはり高額になります。 なお、退職金については、受取る時に 『特別徴収住民税』 という形で先取りで源泉徴収され ますので、翌年の住民税を決める 『年収額』 には加えなくてもよろしい。 住民税、健康保険料が低額になるのは翌々年度になります。 5.退職したら確定申告を 退職したら確定申告をしましょう。 12月以外に退職し、年末調整をしてない場合は、2月16日〜3月15日に確定申告をする と、税金が還付されます。 退職金も含めて確定申告をすると、[給与+退職金]の所得税額の定率減税分で恩恵を受 けられることがあります。 年末調整がされている場合でも退職金の定率減税分の恩恵を受けるため、確定申告をしま しょう。
なお、税制改正により、定率減税は2006年度(2007年3月の確定申告分)で10%に半減
され、2007年度(2008年の確定申告分)以降の定率減税は廃止となりました
従って、退職金を含めて確定申告した場合に恩恵を受けるのは、2007年3月の確定申告
が最後になります。
従って、それ以降は確定申告に退職金を含める意味がなくなります。
6.国民健康保険
国民健康保険税は医療保険分と介護保険分から成り、各々に所得割、資産割、均等割
平均割が定められています。
国民健康保険の保険税の計算を下記に示しておきます。
2006年岐阜県山県市で出された内容を例示しています。(全て年額です。)
基準総所得金額は(確定申告上の所得ー330,000円)となっていました。
私の場合は基準総所得金額が908,700円、固定資産税額が93,400円だったので、保
険税は医療保険分180,600円、介護保険分27,200円、合計207、800円となりました。
私と妻の2人分です。
7.健保の特例退職者制度
60歳になると、特例退職者制度で元勤めていた会社の組合健保に入ることができます。
「健保の被保険者期間が20年以上ある人、または40歳以降10年以上ある人。」
が対象だそうです。
平成20年度で私もこの制度に加入しましたが、介護保険料を含めて20,098円/月(24
1,176円/年)ということになりました。
この保険料は個人収入の値によりません。
全組合員の平均給与額を基準にして保険料が決められます。
従って、収入が少なければ、国保の方が保険料は少ないのですが、60歳からは厚生年金
や企業年金、個人年金などの給付を受け始めますから、結構な収入になります。
従って、この特例退職者制度で健保に入った方が得になると思います。
私の場合は平成20年6月からこの特例制度に入りましたが、平成21年度の保険料は、介
護保険も含めて235,510円/年となっています。
比較の意味で国保だった場合の保険料を試算してみましたが、約265,000円/年となり、
やはり健保の方が得という結果になっています。
それと、高額医療の場合の還付金について、健保の方が国保より得になります。
国保の場合、1ヶ月の自己負担額が約80,000円以上になった時に還付されるのに対し、
健保だと約25,000円以上で還付されます。
私のように60歳前に退職し、一度国保に加入した者でも、被保険者期間20年という条件さ
えあれば、60歳からはこの健保の特例退職者制度が使えます。
60歳で定年退職した人は多分何も考えずにこの制度を使っていると思いますが、早期退職
した人はよく注意をして、60歳になる1ヶ月ぐらい前に元の会社の健保組合に連絡をとってみ ましょう。
「キリン健保」のHPにわかりやすく解説してありますので参考にしてみて下さい。
8.年金請求
60歳になる3ヶ月ほど前に、社会保険庁から年金請求のための資料が送られてきます。
厚生年金給付のための請求資料です。
この年金請求の資料を出さないと年金は受けられません。
年金請求の書類を提出してから3ヶ月程度過ぎてから年金が振り込まれるようになります。
この年金請求の資料は満60歳になったあとで提出します。
提出時には次のような添付資料を必要とします。
@ 雇用保険者証の写し 1部
A 戸籍謄本 1部
B 住民票 1部
C 妻の非課税証明書 1部 (妻が扶養家族の場合 : 市役所の税務課で発行)
そのほか年金振込用口座の通帳も持って行きます。
65歳になるその誕生月には、「加算年金加算開始事由届」というハガキが日本年金機構か
ら送られてきます。
妻が基礎年金を受け取れる年齢になるまでの間、夫の基礎年金(国民年金)に加算してもら
える年金です。
必要事項を記入してそのハガキを送り返したら手続きは終わりです。
9.我が家の支出明細
我が家の1年間の支出明細がまとまりましたので掲載しておきます。
夫婦二人の生活。持ち家あり。ローンなし。
2004年度(56歳)の時と、2009年度(61歳)の時の2通りを載せてあります。
生活設計の参考にしてみて下さい。
2004年度の例
2009年度の例
『家計費(臨時・特別)』 の費目は、CD/DVDを買ったり、外で食事をしたりなどなど。
『レジャー』 の費目は主に旅行や飲み会の費用です。
遠くでゴルフをする場合は、旅費、宿泊費も 『ゴルフ』 の費目に入ります。
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