退職と暮し方の手引き(031)


 第2の人生を考えて退職するに当たり、『退職と生活設計の手引き』 では、主に退職前後の
手続きと退職後の資金計画等の考え方について述べました。
 内容的には、退職後の暮し方についてはさておき、退職に当たっての 『手続き』 やら 『資金
計画』 やらのある程度一般的、普遍的な問題について述べているので、比較的大勢の方々に
当てはまり、参考にして頂きやすかったと思います。
 もちろん、退職後どんな暮し方をするかをある程度決めないと、資金計画も立たないです
が・・・・。

 ここでは、『退職後の暮し方』 について、退職経験者として気がついたことや感じたこと、考え
方などについて記述してみました。
 この 『暮し方』 については、実に本人の 『人生観』 や『価値観』、『哲学』などによってその内
容が変わりますし、本人だけでなく家族、特に奥さんの考え方によっても大きく左右されます。
 従って、『生活設計』 のようにある程度一般的なこととして記述するには無理がありますの
で、『迷人』 の個人的な 『暮し方』 の事例や考え方だと思って参考にしてみて下さい。

 ● 退職後のお付き合いの相手について

 会社に勤めている間は1日のほとんどを会社の人々といっしょに過ごしているので、お付き
合いなどという意識では見ていないと思います。
 退職すると、一気に会社の人々と会わなくなるわけですから、お付き合いの相手に困ります。
 町内会や同級生など、会社と関係ないところに幅広い人脈を持って普段から生活している人
は、その関係がすごく役に立つでしょう。
 私の場合は退職後生まれ故郷に戻ってきたので、町内会も同級生も関係ができてなかった
ので、お付き合いする相手が極端に限られました。
 こちらに来てからは兄弟、特に 『カミさん』 の兄弟姉妹との付き合いが多くなりました。

 それでも、だんだん年数が経っていくと、地域での付き合いも増えていきます。
 私も数年後には、小中学校の同級生、高校の同級生、町内会の若者、町内会のじっちゃん・
ばっちゃんなどとの交流がずい分増えていきました。
 交友関係は心配しなくても、自然といろんなところで新しく出来上がっていくということです。

 会社の人々とも付き合いたいのですが、これが潮を引いたように一気に無くなります。
 私が会社にいた頃もそうだったのですが、退職した人のことなんかすぐ気にしなくなってしま
います。
 『Kさん』 が退職したあと、私が 『Kさん』 に初めてメールを送ったのは
 「私が退職する。」
 というメールでした。
 『Kさん』 が辞めて7ヶ月後のことです。
 (この『Kさん』はその後2005年に61歳で亡くなりました。・・・合掌)
 私の半年後に辞めた 『Mさん』 が
 「会社の関係者からはメールも来ない。」
 とか言っていました。そんなもんです。
 会社ではメールを立ち上げるのもいやだったのに、今では立ち上げるのが楽しみになってし
まってます。
 それなら
 「退職者側からちょっかいを出せば良いのでは。」
 と思われるかもしれませんが、それはよほどの強心臓でないとできません。
 昔、元上司の 『Aさん』 が系列会社に転出したあと、私のいた工場に来るとき、私らにまです
ごく気を使って遠慮しているのがわかりました。
 「そんな気を使わないでアゴで使って下さいよ!」
 って言ったものです。
 系列会社へ移っただけでもこんなもんですから、退職したらもっと強烈な意識です。

 会社の関係者とのつながりは一気に切れますが『ゴルフ』の関係者だけは関係が残ります。
 ゴルフというのはスケジュールを決めてある程度計画的に実行するのと、在職、退職関係な
 く共通の場を提供してくれるという点で関係作りに効果的なのかもしれません。
 こういった意味では、へたでもゴルフは続けていた方が良いと思います。
 できれば固定メンバで定期的に。
 『飲み仲間』 というのは計画性がないので、退職したら関係は続きません。
 ましてや、上司・部下の関係や先輩・後輩の関係はすぐ切れます。
 私は同期入社の人がいなかったので、同期の付き合いは無くてわかりませんが、あまり多く
は期待できないのではないでしょうか。
 OB会に諸先輩が喜んで来られる気持ちがわかります。
 唯一、会社の人から誘ってもらって、気兼ねなく会社関係者に会いに来られる機会なので
す。

  退職してから何するの?

 よく
 「辞めてから何をするの?」
 とか
 「辞めて毎日何をやってるの?」
 とか聞かれます。
 私はいつも
 「何もやっていません。」
 と答えます。
 現実には、家庭菜園程度の農耕をしながら大地と遊んでいますが。

 私は精神的にも疲れていたので、退職後はとにかく何も考えないでボーとして暮らしたいとい
う願望があって、こんな毎日を送っています。
 何年かたったらまた違った生活を求めるかもしれません。でも
 「辞めて何をするかを先々まできっちりと考える必要はない。」
 と思います。
 「退職後は趣味を持たないと!」
 とかいろいろ言いますが、そんなことばっかり考えているともはや脅迫観念となって自分を苦
しめます。

 それから、何もしないといっても結構いろんなことがあるものです。
 「メシどき以外はずっと寝転んでテレビを見ていなければならない。」
 なんてことはありません。
 それでも退職後の暮し方について考えておくことをあえて言うとすれば
 「とりあえず何をするか。」
 だけ考えたらどうでしょう。
 まずは、釣りが好きなら、『釣りざんまい』 を、ゴルフが好きなら 『ゴルフざんまい』 を、旅行
が好きなら 『旅行ざんまい』 をしてみたらどうでしょう。

 でも義務感で何かをするのは止めましょう。
 カルチャセンタやスポーツジムへ行くのも良いですが、あくまでも 『楽しければ』 です。
 何もしないというのは苦痛ではなく 『究極の贅沢』 なのです。

 「毎日日曜日でいいですねえ。」
 と言われたことがありますが
 「いいえ、毎日土曜日です。」
 って答えました。
 「あした会社に行かなければならない。」
 というブルーな気持ちが無いわけですから。

 このように、毎日何をするかというディテールを考えるのはさほど重要なことではありません
が、どういう暮し方をするかの大枠(ハイカラな言葉で言えば『フィロソフィ』かな)については考
えておいた方が良いと思います。
 例えば私の大枠は
 「子供のころのように、無邪気でのんびりとした田舎生活をしたい。」
 ということです。
 具体的に毎日何をするかはディテールであって、上記のように考えれば良いことです。

 この大枠を考えないままだと、それこそディテールの積み重ねの、結果論としての人生になっ
てしまいます。
 でも、これまたひと夫々で、それはそれでいいのかもしれませんが。
 とはいえ、考えてみることは無駄ではないと思いますよ。

 ● 悠々自適の法則

 毎日何するかって脅迫観念を持って退職後の生活に突入しなくて良いために法則を作りまし
た。
 名づけて 『 悠々自適の法則 』 
 私が勝手に作った法則です。
 でもけっこう当たっていると思いますよ

   《人は1日2時間と1ヶ月2日のイベントで充実感を味わう》
    
     ・ 1日2時間何かをやったら、今日は1日よくやったと思う。
         仕事でも1日2時間仕事したら”今日はよく仕事した”と思うでしょ。
     ・ 1ヶ月に2日イベントがあったら、今月はいろいろあったと思う。
         月に2回ゴルフに行ったら、”今月はよく出かけた”と思うでしょ。

 要は、1日を、1ヶ月をびっちり埋める必要はないのです。すかすかで良いのです。
 これが働き蜂だった我々のこれからの優雅な暮し方だと思いますよ。
 仕事が好きで、仕事をしていると充実している。」
 とか
 「生活のために仕事をする。
 という人には会社勤めをお奨めしますが
 やることがないので勤める。
 というのは止めましょう。
 会社のためにも、本人のためにも不幸です。
 そういう人は区切りで一旦辞めてみましょう。
 そして何もしない生活を一度味わってみましょう。
 それで耐えられなかったら、職探しをしたらいいと思いますよ。
 いずれ仕事は辞めなければなりません。
 その時後悔しなくて良いように。

 ● 暇人集中の法則

 悠々自適の法則で、1ヶ月に2日イベントがあったらいいんですが、ここにちょっとやっかいな
法則があります。
 これも私が実験生活から学んで定義した法則なんですが

 名づけて 『 暇人集中の法則 』 

 暇人には妙に日程が集中するんですよね。
 何で同じ日なの?別の日にならないの?
 てなことが結構多いんです。
 他の日はいっぱい空いているのに、ある1日にイベントが集中するんです。
 この間なんか、ある日曜日なんですが、まず 『親戚の法事』 が決まっていたところに 『同窓
会』 開催の通知が来、さらには普段誘われない仲間から 『ゴルフに行こう』 って言われたりし
て。
 もちろん『法事』優先だから
 「ちょっと、別の日にしてよ〜。」
 と言いたくなりますよね。
 とても確率論では解けない事象です。
 でもこんな時にもあわてず騒がず。
  イベントが0にならなかったよりまし。
 とプラス思考で行きましょう。
 
 ● 自然と勤しんでみては

 私には700坪の畑があって、その大地と遊んでいるのが毎日の主要な生活です。
 耕作するスペースは50坪ぐらいにしています(それ以上はやりきれません)。
 残りの土地には適度に草が生えてきますので、草刈機で格闘してやっつけます。
 そうこうしていると結構毎日が過ぎていきます。
 昼間外に出てみると、季節の空気を肌で感じます。
 周りの景色でも季節の移り変わりを感じます。
 それらを感じる心になって、自然界の一員であることを実感します。

 菜園も楽しみの一つです。
 野菜を育てると2〜3ヶ月で結論が出ます。
 愛情を注ぐと応えてくれます。
 注ぎすぎると反発されます。
 放っておくとむちゃくちゃになります。
 子育ての縮図みたいなところがあります。
 でも、野菜は反省すれば
 「来年もう一度やり直し。」
 ということができます。この
 「試行錯誤ができて結論が早く出る。」
 その途中経過が何ともいえずおもしろいのです。
 退職する前からでも良いですから、家庭菜園をやってみてはいかがでしょうか。
 貸し農園はどこにでもあると思います。
 私のように持て余している農地は結構多いと思いますよ。

 公園で毎日2時間うろうろしていると、変なおじさんです。
 図書館で毎日2時間じっとしていても、これまた変なおじさんです。
 でも畑で毎日2時間うろうろしていても、だれも変には思いません。
 自然に勤しんでみてはいかがでしょうか。

  パソコンはうってつけのお友達

 私の場合、パソコンは最も身近な、最も親密なお友達になっています。
 『Wordさん』 と 『Exelさん』 とでいつも3Pしています。
 『Wordさん』 は 『自叙伝』 やら、こういった 『How To』 ものを作る時、一夜をともにしても
らっています。

 『自叙伝』も退職時は30ページだったのが、今では150ページを超えました。
 自分の人生を振り返る意味でも、退職したらまず 『自叙伝』 を作ってみてはいかがでしょう。
 「誰に読んでもらうのか?」
 っていう人もいると思いますが、私はいずれ 『孫』 に読んでもらおうと思っています。20年後
ぐらいに。
 おじいちゃんの生きた証をCDで残しましょう。・・・そのころはCDじゃないかも。
 書いていると 『ノンフィクション作家』 気分で結構没頭し、結構楽しめますよ。

 『Exelさん』 は 『自家製家計簿』 や 『確定申告の計算』、『ゴルフの成績』 や 『競馬の勝敗』
などなど切っても切れない仲になっています。
 表がどんどん凝ってきて、複雑になってきています。IF文などを駆使して。
 何となくぬか味噌みたいな味わいになっています。

 そしてHPを開設するともっとパソコンと親密になります。
 特に、日記や掲示板などを設けると、毎日のお手入れが必要になり、日課のテーマが生れま
すので、結構忙しくなります。

 今や 『晴耕雨読』 ではなく 『晴耕雨パソ』 になっています。
 パソコンで飽きないお友達関係が作れます。
 これもお奨めの一つです。

  自分の健康年齢はわからない

 日本人の平均寿命が男で78歳とか言いますが、これはあくまでも平均。
 しかも健康で生活できる平均年齢はもっと下がります。
 テレビで言っていましたが、健康年齢の平均は65歳だそうです。
 自分が健康に生活できる年齢が何歳までなのかは神のみぞ知るで、誰にもわかりません。
 人には
 「いつか何かをしたい。」
 という夢が一つや二つはあると思います。
 私の場合は
 「生まれ育った故郷に戻って自然と戯れて暮したい。」
 というのが夢で、現在その夢を実現しつつあります。
 健康を損なったり、気力・体力が衰退してからでは夢の実現はおぼつきません。
 健康で気力・体力があるうちに、なるべく早めに、チャンスを見つけて少なくとも一つぐらいの
夢は実現しましょう。
 「働き続けるのが夢だ。」
 という人もあろうかと思いますが、働けなくなった時、違う夢が出てくるかもしれませんよ。
 その時はもう遅いですが。
 野菜作りと違ってやり直しのきかない人生。
 悔いの無い選択をしたいものです。

 ● 退職後10年経ってみて

 平成23年8月で退職後丸10年が経ちました。
 退職後6年経ったとき、下記を記しましたが、思いはまったく変わりません。
 ただ一つ違ってきているとすれば、それは「昔を懐かしむ気持ちが強くなっている。」というこ
とでしょうか。

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 「毎日が土曜日」の生活がずっと続いているわけですが、意外と飽きが来ません。
 どこかで働こうかという気持ちも起きて来ません。

 当然のことですが、会社関係者との縁が薄れ、地域の人たちとの関係が強くなっています。
 「会社関係者との縁がずっと続くといいなー。」
 と当初思っていましたが、それは所詮無理な話でもあり、ある意味不健全でもあります。
 「遠くの親戚より近くの他人。」
 とも言いますが、実生活の場により近い人たちとのつながりが多く・強くなっていくことは、自
然の流れであり、望ましい姿でもありましょう。

 それから、最近強く思っているのは
 「人間、生きているのは心である。」
 ということです。
 肉体というのは、その心が生きていくための手段・道具だと思っています。

 例えば、体に障害のある人を見て健常者は
 「かわいそうに。」
 と思うかもしれませんが、当人はそうは思っていないかもしれません。
 体に障害がある人でも、健常者よりずっと幸せ感を持っていることがあります。
 肉体がどうであれ、心がどうかということなのです。

 退職したとき、おぼろげながら思い描いていた「その後の行き方」というのが、最近はっきりし
てきたような気がします。
 端的に言えば
 「いかに心豊かに生きるか。」
 ということです。

 些細なことにも感動する心を持つ。
 例えば、朝起きてお天気が良かったら
 「おー。すばらしい。」
 と感動できること。

 「心の思い」というのは絶対的なものではありません。相対的なものです。
 月30万円で生活する人も、月100万円で生活する人も、「幸せ感」についてはどっちが上と
は言えません。

 より心豊かに生きて行く方が、いずれ死んでいく自分の人生にとって得策だと思います。
 「仕事が生きがい。」
 という人がいますが、本当にそうなんでしょうか。
 作業に忙殺されて心が休んでいるだけなんじゃないでしょうか。
 結果的に「心が貧しい」のかもしれません。

 こんな思いは宗教に通じます。
 最近少し仏教の勉強をしていますが、宗教の本質は
 「生きている人間が、いかに心豊かに人生をまっとうできるか。」
 ということだと思います。

 私はこれからもさらに「心豊かに」生きていけるよう、心がけていこうと思っています。

 さて、話変わって、この6年の生活の中で得た法則がもう一つあります。
 名づけて 『 暇人健康の法則 』 
 「暇人はダイエットと虫歯予防が可能になる。」
 暇に任せて毎日2時間歩けば確実に体重は減って、メタボリック症候群は解消されます。
 暇に任せて毎朝、毎晩10分づつ歯磨きすれば虫歯は解消されます。



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